「電車の優先席で目撃した、正義感から若者に席を譲るよう迫る高齢者の体験談。ヘルプマーク当事者の視点から、優先席のあり方と”正義感”で動くことのリスクについて考えます。」
皆さんこんにちは、心臓が止まった吉川です。
前回の記事で少し触れた「正義を振りかざすジャスティスおじいちゃん」のエピソード、覚えていますか?
あの記事では「別の記事で紹介する」と書いておきながらそのままにしていたのですが、今回はそのエピソードをもとに、優先席のあり方や”正義感”について自分なりに考えてみようと思います。
あの日、優先席で何が起きたのか

まず改めて当日の状況をお伝えします。
自分が優先席に座っていたある日のこと。目的地の少し手前の駅で、一人の高齢者の男性が乗り込んできました。その男性、優先席の前に立つやいなや、そこに座っていた若い男性に向かってこう言いました。
「あんた障害者?ここは障害者が座る場所だからあんたどきなさいよ」
その場にいた皆の表情が「えっ」となったのは言うまでもありません。開口一番、まったく知らない人に向かって「お前は障害者か?」と聞くのはかなり失礼…と言うか昨今の言葉でいうと「配慮が足りない」よね。
まぁ言っていること自体はわかる。でもそのトーン、その言い方は、なかなかのインパクトでした。
結局その若者は何も言わず席を立ち、おじいちゃんは当然のように座りました。
さて、この出来事を見ていた自分はどう思ったか。「スッキリした」とはならなかったんですよね。むしろ複雑な気持ちになってしまったんです。
言っていることは正しい、でも……

おじいちゃんの言っていることは、確かに間違ってはいません。優先席は高齢者・障害者・妊婦・けが人などが優先的に利用できる席です。その趣旨から言えば、健康な若者が優先席を占領しているのは本来望ましくない。
ただ、自分が引っかかったのは「言い方」や「態度」の部分です。
「座って当然」という慢心が見え隠れしていたこと。
相手に事情があるかもしれないという可能性を一切考慮しない様子だったこと。
正義感から来る行動が、周囲の空気を一気に険悪にしたこと。
正しいことを言っていても、それが正しい行動かどうかはまた別の話なんだなと、この出来事で改めて感じました。
そもそも優先席って何のためにある?

ここで少し整理させてください。
優先席は「専用席」ではありません。正式には「優先座席」と呼ばれ、必要としている人が優先して使える席というのが本来の意味です。健常者が座ってはいけないというルールはなく、必要な人が現れたら譲りましょうという仕組みです。なので今回で言うところの若者が座っていてもなんら問題は無いワケなんですね。
そしてここが重要なのですが、「外見だけでは判断できない事情」を抱えている人が世の中にはたくさんいます。
自分自身がまさにその一人で、ヘルプマークをつけているのもそのためです。見た目は普通の30代男性でも、心臓にペースメーカーが入っている。そういう人間が実際に優先席を使っています。以下は内部障害の種類についての解説。
・心臓機能障害
全身に必要な血液を送り出す心臓の機能が低下した状態のことです。心臓の収縮のリズムが不規則な人は「ペースメーカー」という医療機器を胸部に埋め込んでいます。
・腎臓機能障害
病気により腎臓の働きが悪くなった状態のことです。体に有害な老廃物や水分を排泄することができなくなり、不必要な物質や有害な物質が体の中に蓄積してしまいます。
・呼吸器機能障害
肺の機能が低下したことにより、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなる状態のことです。呼吸器機能障害のある方の中には、酸素吸入するために、常に酸素ボンベを携帯している人もいます。
・肝臓機能障害
さまざまな原因により、肝臓の機能が低下した状態のことです。それにより、倦怠感(だるさ)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、出血傾向(あざができやすい)、易感染性(感染しやすい)、吐血、意識障害などが生じやすくなります。
・膀胱・直腸機能障害
尿をためる膀胱、便をためる直腸が、さまざまな病気のため機能低下または機能を失った状態のことです。排泄物を体外に排泄するための、人工肛門・人工膀胱を造設する方(オストメイト)もいます。
・小腸機能障害
小腸の広範囲に及ぶ切除や病気によって、小腸の機能が不十分になった状態のことです。消化吸収がうまくできず、通常の経口摂取では栄養維持が困難な方もいます。
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害
HIVウイルスに感染すると、白血球の一種であるリンパ球が破壊され、免疫機能が低下します。そのため、発熱・下痢・体重減少・全身倦怠感などが現れます。特定の病状があらわれるとエイズ(後天性免疫不全症候群)の発症となります。(ハートシティ東京 内部障害 障害特性 より引用)
つまり若者が優先席に座っていたとしても、その人に見えない事情がある可能性は十分あるわけですね。
「正義感」が生むリスク

今回のケースでは若者が黙って席を譲ったので大事には至りませんでしたが、もし相手が逆ギレしていたら?もしその若者にも見えない障害や体調不良があったとしたら?
正義感からの行動は、相手の事情をすっ飛ばすことがあります。そして最悪の場合、場を余計にこじらせるリスクがある。善意がトラブルの引き金になることは、残念ながら珍しくありません。
また、声を上げるのは勇気のあることでもあるし、気持ちはわかる。ただ「私は正しい」という確信が強ければ強いほど、相手への配慮が薄れていくことがあるのも事実です。
なぜ高齢者の方がこうなるのか気になった方はこちら
ヘルプマーク当事者として思うこと

自分がこのシーンを複雑な気持ちで見ていた理由、もう一つあります。
もしあのおじいちゃんが自分の方を向いていたら、自分は「障害者か?」と問われる立場になっていたかもしれない。そう考えると、席を権利として主張される空気が少し怖いなと感じたんですよね。
あのおじいちゃんの雰囲気からするに下手したら若者に突っかかりそうでしたし、逆に突っかかられてもおかしくはないですからね。
優先席は「権利の奪い合いをする場所」ではなくて、「お互いに気を配り合う場所」であってほしい。当事者としてはそう思います。
声を荒げて言うよりも、優しくいってあげればトラブルも起こりづらかったりしますし、逆に言われた側もそこまで嫌な気分はしないと思うんですよね。
個人的な感想ですが、座席を譲る側も「譲ってあげたいな」と思ってはじめて座席を譲るという行動が出来ると思うので、無条件に障害者やその他の方は席を譲ってもらえる、と思ったらそれはちょっと違うよと声を大にして言いたい。
つまりは、みんなが心地よく電車を利用したいですね!
そんな自分も、高齢者やヘルプマーク、マタニティマークを付けている人を見かけたら迷わず声をかけるようにしてます!(その際に自分のヘルプマークを見て「えっ!?大丈夫なんですか?」と逆に心配されるのは内緒w)
まとめ:正義より「思いやり」

今回の体験談から言いたかったのは、おじいちゃんを批判したいわけではありません。ただ「正しいことを正しく伝える」のは意外と難しいし、相手の事情を想像する一呼吸がある方が、結果的にみんなにとって良い場になるんじゃないかということです。
優先席で正義を振りかざす前に、ちょっとだけ「この人に何か事情があるかも」と考えてみる。それだけで電車の中がもう少し穏やかになるかもしれないと、ヘルプマーク当事者として思う今日この頃です。
おしまい。
健康長寿ネット「高齢者の心理的特徴」







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